【雑感】老舗寝具メーカーの展示会で感じたこと
定休日を利用して老舗寝具メーカーの展示会に行ってきました。
毎年できる限り展示会には伺うようにしていますが、いつ行っても「前回とどこが変わったのだろう」という感想を抱くばかり。柄が違うとか、生地の組成が変わったとか、そういった細かな変化はあっても本質的な変化はありません。(本来はリーディングカンパニーならアッと驚くような仕掛けや進化、将来への展望を見せてほしいものですが…)
残念ながらその印象は今回も同様でした。
特に残念だったのは、まともな商品知識を持っている社員さんが展示会場にいないということです。
例えば麻の寝具。
麻のパッドの組成を聞いてもすぐに答えが返ってきません。「少しお待ちください」とカタログで調べてから「ラミーとリネンの交織です」という答えが返ってきます。そして「詰め物の量は何グラムですか?」と聞いたら今度は「えー、カタログに載っていないですね…すみません、分かりません。」という返答。
いやいやいやいや。
品数が50とか100とかあるわけじゃないんですよ。パッドだけなら3種類、掛け寝具を含めても10種類あるかどうかですよ。そこのブースに専任として立っていて、この受け答えはあまりにも悲しい。
極め付けは、アイリッシュリネンを使った最高級の15万円の肌掛布団について糸の番手を尋ねても「分かりません…」という始末。
「一番高いこのアイリッシュリネンの布団が一番最初に売り切れるんですよ」と自信満々に語る前に、寝具メーカーの社員ならもう少し商品についての知識を身につけるべきでしょう。
糸番手も、詰め物の量も初歩中の初歩です(しかもフラッグシップの布団)。
原料がどこの国で、紡績や織布(しょくふ)をどこでやっているのかを聞いているわけではありません。(実はこのことも尋ねましたが、当然返答は御察しの通り)
もちろん数多の社員さんの中には、僕などでは及びもつかない知識、情報、経験をお持ちの方も沢山いらっしゃるのですが、そうでない方々とのレベル差があまりにも激しい。
確かに糸番手を知っているからと言って、それが直接売り上げに結びつくわけではありませんし、そんな些細なことよりも「接客が上手」な人の方が「沢山売る」のも事実です。
ですが些細なことだと切り捨て、メーカーが知ることをやめてしまったなら、その価値・技術・文化が世間に正しく理解されることはないし、その商品・産業が将来永きに渡って継続していくことなどありえよう筈がありません。
価格訴求でなく、価値訴求で勝負する企業なら尚更必要なことではないでしょうか。